雅「着いた~! うみーー!」
どうも、赤石雅和です! 英語の補修も無事終わり、約束通り淳也君にプライベートビーチに連れて来てもらってます!
大「しっかし、めっちゃ暑い!」
正「真夏だからね」
俊「それにしても、懐かしいな。淳也の神戸の別荘!」
流「俊太君や俺は昔からお世話になっとるもんな」
淳「俺のオトンに感謝せーよ?」
そういや、淳也君のお父さんに会ったことあるけど、我が子同然のように可愛がってもらったっけ。
忠「とりあえず、コテージに荷物置いて遊びに行こーや!」
そう言ってたら、忠晴が誰かにぶつかってしまった。
忠「あ、すみません!」
?「こちらこそすいません···っ!」
すると、ぶつかられた人が忠晴の顔を見て驚いた。
忠「あの、大丈夫ですか?」
?「···ちゅうくん?」
忠「え···るーく? るーくやんな!」
るーく? 凄い名前の人だなぁ···。
淳「なぁ、知り合いなん?」
忠「あ、おん! 大阪にいたときの友達でな! 今も連絡は取り合ってたんやけど、顔は見てへんし声も聞いとらんかったから」
龍「黒井龍之介言います! よろしゅうお願いします!」
龍之介君か~。ん? でも、何で「るーく」なんだ? そういう俺の気持ちを、正宏が代弁してくれた。
正「何でるーく、ちゅうくんって呼びあってるの?」
忠「ちっさいとき、俺がるーくを呼ぼうとしたときにちょっと噛んでもーて、るーくんって言ってもーたの。それでるーくは振り向いてくれたからそれでええかってなって、それが少し省略されて、るーくになったんよ」
龍「僕はちゅうくんのお母さんがそう呼んでたからやんな?」
忠「そうそう。今も呼ばれとるからな!」
なるほど、るーのすけって···可愛いなぁ!
忠「でも、何でここおるん?」
龍「オトンの親友の黄谷さんって言う人が、息子と友達が使うらしいから、よかったら来ーへんかって誘って貰ったんよ」
忠「それ俺たちのことや!」
龍「へ?」
淳「どうも、話に出てきた息子の黄谷淳也です。よろしくな」
龍「あ、挨拶が遅れてすみません! 黒井家次男の黒井龍之介です! よろしゅうお願いします」
淳「オトンからサプライズがあるって聞いとったけど、たぶん君のことやんな?」
龍「えと、夏休み明けから、淳也さんが副担任をしているクラスに転校することになったんで、多分その事やと」
俺らのクラスに転校してくるの⁉ 楽しくなりそう!
大「ねー! とりあえず荷物置いて海行こーよー!」
俊「このままだと溶けちゃいそうだよ~」
雅「龍之介君も一緒に行こ!」
龍「おん!」
そんなこんなで、俺たちはコテージに荷物をおき、水着に着替えて海に出た。淳也君と俊太君は、保護者らしく砂浜にレジャーシートを引いたり、パラソルを立てたりしてくれた。
龍「あの、これ、うちのオカンからです。海でお友達と一緒に食べなさいって」
そう言って、持ってたクーラーボックスを開けると、中にはキンキンに冷えたジュースやアイスが。
大「めっちゃ入ってんじゃん!」
龍「大人数らしいって聞いとったから、結構な数用意したって言うてました」
正「そういえば、龍之介君は···」
流斗が言いかけた途中で、
龍「龍之介でええですよ」
雅「じゃあ龍之介で! あと、敬語なしね」
龍「おん」
なんて言うやり取りをしたから、俺らはそう呼ぶことにした。
正「話を続けるね。龍之介はっていうか、黒井家はなんか有名な一族なの? お父さんが黄谷家と親友なら多分そうだよね?」
流「え、知らんの? 黒井家と言えばあの有名な粉もんチェーン店を経営しとるとこやで」
俊「えぇっ! あの、美味しいけど安くてまさに学生の味方ってやつ? 僕らもよく行くよね!」
龍「ご贔屓にしてもらっておおきに!」
忠「行く度に淳也君がお店の心配してんねん。こんな安くて大丈夫なんって!」
龍「ちゃんと黒字経営できとるから大丈夫やで!」
なんて言う話をしながら、着々と浮き輪やらビーチボールやら膨らませていく。俺は泳げるけど、案外淳也君とか泳げないからね。
大「よっしゃあ! 俺一番乗りー!」
正「こら! 準備体操とかしないと足つったりするよ」
大「みんなが膨らませてた時にしてたから大丈夫~!」
流「じゃあ俺二番~!」
忠「俺三番目~!」
淳「も~お前ら早いねんて!」
こうして見ると、やっぱ俺らって賑やかなんだな~って言うのがよくわかる。ふと横を見ると、龍之介が楽しそうにニコニコしていた。
龍「ええなぁ。あんな楽しそうで」
雅「友達とかいないの?」
龍「変なこと言ううかもやけど、僕の家柄を見て、仲良くしよーやって人はたくさんおる。せやけど、僕という人間を見てくれる人がおらんくて···」
雅「それは嫌だね···」
俊「なら、ここのグループに入ればいいよ。忠晴もここに入ったし、付き合っていてもおかしくないって疑われるぐらい仲良いから!」
雅「そーだよ! 大人も二人いるし···」
龍「え、淳也くんともう一人おるん?」
俊「僕は淳也のクラスの担任だよ」
龍「ええっ! ホンマですか!」
雅「そんなに驚く?」
龍「高校生か大学生やと思ってた···」
俊「ふふっ。僕もまだまだ若いってことだね!」
忠「おーい! 雅和も俊太君もるーくもはよこっち来いや~!」
流「冷たくて気持ちええで~!」
忠晴と流斗が俺たちを呼んでいる。そろそろ海に入らないと、熱中症とかになりそう。
龍「今行くーー!」
俊「ほら、雅和も行くよ!」
雅「はいはい!」
俺は俊太君と龍之介の手を掴んで他の五人がいる場所まで全力でダッシュした。そしてそのまま海へダイブ!
俊「···ぷはっ! もー! 雅和はこういう時本当に元気なんだから!」
龍「めっちゃ冷たい!」
大「めっちゃ飛沫かかったんだけど!」
雅「でも気持ちよかったでしょ?」
大「うん。だから許す!」
正「あんた単純だな!」
正宏のツッコミに、みんなで笑う。龍之介も、出会ってまだ数十分ということを感じさせないくらい馴染んでいた。
淳「せや、昼ご飯バーベキューせーへん?オトンが事前に冷蔵庫の中に材料めっちゃ入れとってくれたし」
流「ええなぁ、夏の海にぴったりやわ!」
大「肉食いたいーー!」
俊「ちゃんと野菜も食べてよ? 野菜食べない人には肉あげないからね?」
龍「なんやその過酷ルール!」
忠「るーく野菜全般嫌いやもんな!」
龍「全般やあらへん、キャベツとネギ以外の緑色した野菜が嫌いなだけや!」
雅「それじゃほとんどダメじゃん! お子ちゃまだね~」
龍「なんやとぉ! これでもくらえ!」
次の瞬間、俺の顔にピューっと水がかかった。龍之介の手には今時の高性能な水鉄砲が握られていて、そこから俺を狙って撃ったらしい。これは仕返ししてやらないとね!
雅「やったなー! 仕返しだー!」
淳「ちょっ···関係ない俺らまで巻き込まれとんのやけど!」
正「こーなったら全員参加でしょ!」
それから俺たちは、お腹が空くまで、高校生や先生だと思えないくらいはしゃぎ回った。
二時間くらいぶっ通しで遊んだ後、誰かしらが空腹に気づいてお腹すいたと言えば、みんなも口々に賛同した。男が八人もいると、準備がちゃっちゃと終わる。忠晴や俊太君が料理好きだから、下ごしらえもバッチリ。後は、うまい具合に焼いて食べるだけ。
大「ねぇねぇ、これってもう焼けてる?」
忠「大丈夫やで。ほら、食べや」
大「ありがとー!」
淳「こら、龍之介! ピーマンちゃんと食べや!」
龍「やって、苦いやんか~」
雅「正宏、ちゃんと食べれてる?」
正「大丈夫。美味しいよ」
流「俊太くん、焼くの代わるで」
俊「ありがとう! 僕も食べるぞ~!」
いつもよりわちゃわちゃガヤガヤした昼ご飯になったけど、皆で食べたご飯はとっても美味しかった。その後は、黒井家から貰ったアイスを食べた。途中で、俊太君がこんな話をし始めた。
俊「そういや、覚えてる? 淳也が男にナンパされたの、ここだったよね?」
そう言われた瞬間、淳也君が飲んでたアイスコーヒーを吹き出しそうになった。俺も含めた高校生メンバーはその話に興味津々。
大「その話本当?」
流「せやせや! そういや、そんな話聞いたことあるわ!」
正「でも、淳也君って腕や脚が細いから、女性に見られてもおかしくないかも」
忠「それな! 顔つきも中性的やし!」
龍「俺、最初見たとき性別どっちかわからんかったもん!」
雅「それって、どんな状況だったの?」
俺の質問に、俊太君が待ってましたとばかりに、意気揚々と答えてくれた。
俊「あれは、高校一年生だったときの事。淳也の家族と俺の家族とで海水浴に来たときに、買い物係になった淳也と僕は、かき氷と飲み物に別れて買いに行くことにしたの。僕はさっさとかき氷を買って戻ったんだけど、淳也がなかなか帰ってこなくって。んで、様子を見に行ったら、二人の男に絡まれててさ」
大「あははっ!」
俊「君可愛いね、俺らと付き合ってよ···みたいなこと言われてて、本当ビックリしたんだから!」
淳「俺が一番驚いたわ!」
そりゃ、いきなり男に話しかけられて誘われたら驚くわな。
俊「しかも、その時は今みたいにしっかりしてなくて、気弱で本当に女の子みたいだったから、余計に絡まれやすかったんだ。髪も男にしては長くてツヤツヤでさ」
忠「その後、どうなったん?」
俊「まぁ僕がさ、その時ちょっとヤンチャしてて、その力で全員追っ払ったよ。ちゃんと淳也は男ですって話してからね。信じないやつもいたけど」
流「え、ちょお待って。俊太君、ヤンチャって···」
俊「昔の話だよ。淳也が気弱だけど女子から好かれやすかったから、いじめの主犯に狙われやすかったんだ。だから、用心棒的な役割してた」
淳「俊太ホンマに怖かったんやからな! いっつも俺と一緒にいて、俺に話しかけてくる男にはガン飛ばしとったし!」
正「今じゃ想像もつかないよ!」
龍「ホンマやで!」
本当に正宏の言った通りだと思う。今の俊太君は、温厚で誰に対しても優しくて生徒に大人気な先生なのに!
俊「さ、昔話はこれくらいにして。片付けてまた海に泳ぎに行こうよ!」
淳「せやで! 俺たちのしょーもない昔話よりそっちの方が何倍も楽しいわ!」
雅「よっしゃ! 泳げる人タイム競争しよーぜー!」
大「勝った人には何かあんの?」
流「一個残ってもうたアイスはどや!」
忠「さんせー! あ、でも、淳也君とるーくと正宏は泳げへんから···」
淳「俺は大丈夫やで」
龍「俺も! 淳也君と正宏と遊んどるから!」
正「そーだよ! だから争奪戦しておいで?」
俊「僕も参加するからね! ほら行くよ!」
残り一つのアイスをかけた競争に参加するやつらが、待てーと俊太君を追いかける。夏の海にいつも通りの七つの影、今回からはそれに一つ足されることになる。
夏休み明けの学校初日、俺たちのクラスで
龍「関西の高校から転校してきました、黒井龍之介です! よろしくお願いします!」
と言う元気な声が響いたのは言うまでもない。
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