偶然、紙が発見された。
「 1000年後の未来の予想 2019/6
1000年後の未来では、人類は幾度の危機を乗り越えたが、その代わりに地球が脆弱になり、根本的に強化する必要性があると思われる。大気はかつてないほど不安定になり、空の澄んだ色はもう見られない。技術はかつてないほど進歩を遂げたが、人間の首を絞めるはめになるとは誰もが予測するものの、実際現実となると、事態の深刻さに心を痛めるものが多くいた。機械化が進んだとは言え、不具合を直すのは未だに人間の役目だ。機械は自己修復が可能だが、部品の老朽には対応できない。いずれにせよ、人間は必要とされるが、あくまでも機械を正常に動かし続けるための道具にすぎない。︙︙」
何かの論文のようだが、誰が書いたかは不明だった。残りは、紙がぼろぼろになって読めなかった。だが、これでも1000年程前の紙にしては保存状態の良い方だった。確かに、西暦3020年は地球が脆弱にはなり、今までの環境とは大きく変わった。機械化はほぼ100パーセントで、アナログ様式は無駄と切り捨てられた。遺伝子操作なんて、倫理よりも生産性と効率を優先され、誰も不審に思わなくなった。ただ、予想から外れていたのは、人々は状況に慣れ切っていたあまりに、何とも思わなかったのである。むしろ、今の人間は過去を見捨て、現実のみを捉えるようになっていった︙︙。
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研究所にて、この紙を発掘した、顔の良い変質者が言った。
「んん~、過去の人間は、未来に危機感を抱きすぎだよねえ?現世でも同じ意見の人っているのかな?進化してダメになったら退化すればいいんじゃない!みたいな!」
他の学者は顔をしかめる。
「いまいち何を仰せられているのかが、理解できません。チェロキー語でも話していらっしゃるのですか?第一、この素晴らしい世のシステムに反感を持っている方がいらっしゃるというのですか?」
「今更このような紙が見つかることに何か陰謀があるはず!」
ガヤガヤと、学者たちが騒いでいる間に呆れた変質者は、その場から離れた。人間は何年経っても変わらないね、と言い残して。
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